電車を降り、駅を出て、この街を訪れたとき、あちこちである美術館に関する錆びた看板や、薄汚れたポスターを見た。それらの色褪せたポスターの文字を読みとりながら、僕たちはある美術館を目指した。 かつては大勢の人がこの美術館へ来るために、この街を訪れたのだろう。街の軒並みは美しく、足下の道路も舗装されている。今はその美しさに見合わない人気の少なさだ。町おこしに失敗したのだろう。 「ここに本当に佐山の見たいものはあるの?」 「ええ。きっとあるはずよ」 彼女は静かに、はっきりと答えた。
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